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小形風力発電機は台風に耐えられるのか?

小形風力発電機は台風に耐えられるか?

風が強ければ発電量が増えるのが小形風力発電機ですが、台風が上陸したときどうなるのでしょうか?

小形風力発電機の規格

小形風力発電機は、IEC61400-1,2(国際規格)やJIS(日本規格)で規格が定められており、そのなかに設計に用いられた基準風速というものがあります。基準風速は、50年に1度起こる可能性のある10分間の平均局地風速のことをいいます。耐えられるように設計した基準風速に応じてクラスが分かれています。

風車クラス I II III IIII S
IEC61400-1 50m/s 42.5m/s 37.5m/s 設計者が規程する数値
JIS 50m/s 42.5m/s 37.5m/s 30m/s 設計者が規程する数値

メガワット級の洋上風力発電はClassI以上が多く、小形風力発電ではClassII、IIIを設計基準としている機種が多いようです。乱流についても規程がありますが、割愛します。


class

小型風力発電機14機種の徹底比較 より。記載がない機種はWEBサイト、仕様書に該当の箇所を見つけられなかったものです。

50年に一度の確率で38m/sの最大風速が発生する可能性がある地域

平成12年建設省(現国土交通省)告示第1454号で、平均的な地形の地上の高さ10mにおける50年に1度の確率で発生する年最大風速が発表されています。

ClassIIIの基準風速37.5m/sを超える38m/s以上の地域は、房総半島の広い範囲、高知県の海岸沿いの地域、鹿児島県の南半分、沖縄県などです。

※小形風力発電機の機種によりハブ高さ(発電機が設置されている高さ)は異なります。一般的に地上からの高さが高くなると風速が強くなります。

下記の地図のうち、黄色以上が基準風速38m/s以上の地域です。

map-kijunfusoku

建設省告示第1454号を基に作図。詳細は、建設省告示第1454号をご確認ください。

地域 m/s
千葉県のうち

銚子市 館山市 木更津市 茂原市 東金市 八日市場市 旭市 勝浦市 市原市 鴨川市 君津市 富津市 袖ヶ浦市 海上郡 匝瑳郡 山武郡のうち大網白里町、九十九里町、成東町、蓮沼村、松尾町及び横芝町 長生郡 夷隅郡 安房郡

東京都のうち

大島町 利島村 新島村 神津島村 三宅村 御蔵島村

徳島県のうち

那賀郡のうち鷲敷町、相生町、上那賀町、木沢村及び木頭村 海部郡

高知県のうち

高知市 安芸市 南国市 土佐市 須崎市 中村市 土佐清水市 安芸郡のうち馬路村及び芸西村 香美郡 吾川郡のうち春野町 高岡郡のうち中土佐町及び窪川町 幡多郡のうち佐賀町及び大方町

鹿児島県のうち

鹿児島市 鹿屋市 串木野市 垂水市 鹿児島郡のうち桜島町 肝属郡のうち串良町、東串良町、高山町、吾平町、内之浦町及び大根占町 日置郡のうち市来町、東市来町、伊集院町、松元町、郡山町、日吉町及び吹上町

38m/s
高知県のうち

室戸市 安芸郡のうち東洋町、奈半利町、田野町、安田町及び北川村

鹿児島県のうち

枕崎市 指宿市 加世田市 西之表市 揖宿郡 川辺郡 日置郡のうち金峰町 薩摩郡のうち里村、上甑村、下甑村及び鹿島村 肝属郡のうち根占町、田代町及び佐多町

40m/s
東京都のうち

八丈町 青ヶ島村 小笠原村

鹿児島県のうち

熊毛郡のうち中種子町及び南種子町

42m/s
鹿児島県のうち

鹿児島郡のうち三島村 熊毛郡のうち上屋久町及び屋久町

44m/s
鹿児島県のうち

名瀬市 鹿児島郡のうち十島村 大島郡

沖縄県

46m/s

台風の風速とは?最大風速と最大瞬間風速

日本の場合、最大風速が38m/sを超えるようなケースの多くは台風によるものだと考えられます。

台風は、低気圧域内の最大風速(10分平均)が17.2m/s以上です。最大風速は台風の中心付近で発生しますが、それがどこで発生しているのかは明確になっていないようです。おそらく、台風によっても変わり、実測していないので特定が困難なのだと思います。最大風速は台風の中心付近のかなり限られた範囲内でのみ発生するのだと思います。

台風の強さは最大風速によって呼称が変わります。

小形風力発電機の設計基準で多いClassIIが42.5m/s、ClassIIIが37.5m/sであることを考えると、「強い」以上の台風の中心付近が小形風力発電機を通過する際、風による倒壊のリスクが高まると言えそうです。

階級 最大風速
強い 33m/s~44m/s未満
非常に強い 44m/s~54m/s未満
猛烈な 54m/s~

「強い」以上の台風は年間どのくらい発生し、どのくらい上陸しているのでしょうか?

台風は年間およそ20~30発生し、そのうち強い台風は10~20程度あります。強い台風の割合は50~60%程度です。日本に上陸する台風は過去20年間の平均で年間2.6あります。そのうち、50~60%が強い台風だと考えると年間で1~2回程度、小形風力発電機を倒壊させる最大風速を持つ台風が日本に上陸すると言えそうです。先ほどもいいましたが、最大風速は中心付近の非常に限られた範囲で発生する最大の風速です。

※ 2004年には10の台風が上陸しています。台風の上陸数は年により変わります。

最大風速と最大瞬間風速

最大風速と最大瞬間風速は似た言葉ですが、分けて考える必要があります。

非常に強いと報道されている2016年の台風10号は、中心付近の最大風速が45m/s(10分平均)、最大瞬間風速が60m/sです(平成28年08月29日12時45分 気象庁発表)。

風は一定ではありませんから、どの期間の風速かを考える必要があります。発電量の計算によく用いられるのは年間平均風速。台風の最大風速は10分間の平均。台風の最大瞬間風速は、瞬間(数秒程度)です。


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小型風力発電機14機種の徹底比較 より。記載がない機種はWEBサイト、仕様書に該当の箇所を見つけられなかったものです。

可倒式の支柱で台風をやりすごす

小形風力発電の支柱は高いもので20m程度になります。長い支柱はいくつかのパーツを組み合わせて建設します。

小形風車の中には、メンテナンスを容易にするため、根本から倒せるタイプの支柱があります。油圧ダンパーを使って風車を倒し、作業者が地上レベルでナセル(発電機を格納した筐体)を開けて作業ができます。高所作業車などが必要なく、メンテナンスを簡単にできるようにする機構ですが、暴風のときにも活用できます。

台風が直撃する際に、あらかじめ風車を倒しておくことで支柱やブレードにかかる過負荷を軽減できます。

まとめ

年間で1~2回程度、小形風力発電機を倒壊させる最大風速を持つ台風が日本に上陸する可能性があると言えます。その台風が、小形風力発電を直撃する可能性は地域により異なります。

台風のリスクについて、どのように感じられたでしょうか?

最大風速は台風の中心付近の限られた範囲で発生するものですが、実際は飛来物が衝突したり、乱流によって思わぬ力がかかるなど、基準風速以下でも発電機や風車が損傷するかもしれません。リスクを正確に予測するのは困難です。

台風による倒壊を補償する保険に加入するという方法もあります。また、台風が多い地域、多くない地域に関わらず、近隣に民家がある場合は計画の見直しが必要です。

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