ヨーロッパでは1年を通して偏西風が吹き、風向きもほとんど変わりません。風力発電が特に普及しているデンマークやドイツ、オランダは風をさえぎる山も少なく、平坦な地が続いているので風車の運搬や設置工事も容易です。
一方の日本は、年間を通じて一方向から風が吹く地域は多くありません。おおむね夏は南風、冬は北風が吹く地域が多いです。ただし、山が多く複雑な地形のため地域による風の変化も大きいです。
ある地点において、最も多い風向きのことを卓越風向、または最頻風向きといいます。また、年間を通じた風向きの出現頻度をグラフにしたものを風配図といいます。
この地点の風向きは西と東に集中しています。(環境省風況マップの風配図)
現地確認には卓越風向の方角に何があるかを確認
一般的な小形風車は扇風機のように首を振ることができます。センサーがついていて、風上に風車が向くように制御されています。そのため、どこから風が吹いても首を回して風車の向きを変えて発電できます。ただし、1日中北から風が吹き続ける場合と、時間ごとに風向きが変わる地点では、同じ風速であっても発電効率に差がでます。
なるべく特定方向からの風が多い方が発電効率が高まります。また、風力発電の検討場所の卓越風向に何があるのかは現地確認の際のポイントの一つです。もし、卓越風向のすぐそばに山や防風林やあると風をさえぎってしまうかもしれません。小形風力発電の候補地に行かれる際は、風配図と方位磁石を持って、卓越風向に何があるのか確認してください。最近は、スマートフォンで方位磁石のアプリがあるので便利です。
複数基設置するときは風車間の距離に注意してください
小形風車を複数基設置する場合も卓越風向を確認する必要があります。20kW未満の小形風力発電機のFIT価格は55円/kWhです。例えば、小形風車1基あたりの出力が9kWであれば、同じ場所に2基(18kW)建てて、1つの小形風力発電所として申請できます。
もし、卓越風向の風上と風下に2基の風車を並べてしまったら、風下側の風車は充分に風を受けることができません。卓越風向に対して、縦に並べるのではなく、横に並べるのが理想です。
NEDOの風力発電導入ガイドマップでは、卓越風向がはっきりしている場所に風車を複数基設置する場合は、風車の直径の3倍離して設置。卓越風向がはっきりしていない場合は、風車の直径の10倍離して設置するのが良いとされています。
メーカーや機種によって風車の直径の7倍、最低でも5倍などのガイドラインが設けられています。いずれも基準になるのは卓越風向です。
NEDO「風力発電導入ガイドマップ」より
ヨーロッパは再生可能エネルギーの分野で日本の10年先に行っています。制度の移り変わりや考え方など参考にすべき点は多くあります。一方で地形や天候が違うため、ヨーロッパのやり方をそのまま持ってきても日本ではうまくいきません。今後もヨーロッパの良い点を学びつつ、日本にローカライズした再生可能エネルギー発電所の建設・運営ノウハウを磨いて参りたいと思います。