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風速を基にした、小型風力発電の発電量の計算方法

風速を基にした、小型風力発電の発電量の計算方法

小型風力発電は、風が強いと発電量も多くなります。風速を基にした発電量の計算方法をご説明します。

定格出力と定格出力時風速

小型風力発電に使われるのは、ClassNKの認証を受けた14機種です。それぞれ、定格出力と定格出力時風速が公開されています。

(14機種について詳しくは、小型風力発電機14機種の徹底比較をご覧ください。)

例えば14機種のうちの一つであるCF20は、定格出力が19.5kW、定格出力時風速が9m/sです。これは、9m/sの風が吹いているとき、瞬間的に19.5kW発電するという意味です。これが1時間続けば、19.5kWhの発電量となります。もし、24時間365日、9m/sの風が吹いていた場合、CF20の発電量は次の計算式で導けます。

19.5(kW)×24(時間)×365(日)=170,820kWh
170,820(kWh)×55(円/kWh)=9,395,100円/年
9,395,100(円)×20(年)=187,902,000円/20年

20年間の期待売電額は、1億8,790万円です。これはもちろん机上の計算です。

9m/sの風は、和名では疾風と呼ばれる比較的強い風です。1年を通してそれだけ強い風が吹く地域は、日本の陸地にはなかなかないでしょう。高い山の稜線など非常に限られた地点だけです。そのため、候補地の風速で発電量を計算する必要があります。

平均風速とパワーカーブ

上記の通り、風の強さで発電量は変わります。小形風力発電機の各メーカーでは、風速ごとの発電量(パワーカーブ)を公開しています。

パワーカーブ

※ 以下のシミュレーションは仮定のものです。

候補地の年間平均風速が6.6m/sだとします。

例えば6.6m/s時の出力が8kWだったとし、24時間365日、6.6m/sの風が吹いていた場合、次の計算式で発電量がわかります。

8(kW)×24(時間)×365(日)=70,080kWh
70,080(kWh)×55(円/kWh)=3,854,400円/年
3,854,400(円)×20(年)=77,088,000円/20年

20年間の期待売電額は、7,708万円です。しかし、この数値もまだ十分ではありません。6.6m/sという平均風速が「地上から何mの時の風速なのか」を考慮していないからです。

ハブ高さでの風速補正

平均風速を調べると、「地上からの高さが○mの時の」という但し書きがつきます。風速は同じ地点でも高度があがるほど強くなり、地上に近づくほど弱くなります。

現在入手しやすい日本国内の年間平均風速は、地上からの高さ30m、50m、70m、80mです。一方、小形風力発電機の高さは、10~25mほどです。調べた平均風速と、小形風力発電機が設置される場所の高さに違いがある場合、その高さで風速を補正することが必要です。

小型風力発電のナセル(発電機やコンピュータが収められた筐体)の地上からの高さをハブ高さといいます。

高度が高くなるのと風速が強くなる。

高度が下がると風速が弱まります(上記の数値は、イメージです。地形、環境により異なります)。

風速の補正は、簡易的に10m下がるごと10%風が弱まるとする方法や、より細かくウィンドシアー指数を使って計算する方法があります。

地上高さ30m時の風速が6.6m/sの場合、10m下がるごとに10%風が弱まると仮定します。地上20mと地上10mに同じ小形風力発電機を設置した場合、その発電量はどのようになるでしょうか?計算をわかりやすくするため、小数点第2位以下を切り捨てます。また、それぞれの風速のときの出力は下記の通りとします。

風速 出力
6m/s 6.3kW
5.4m/s 4.6W

地上20m設置の場合

6.6(m/s)×0.9=6m/s (※小数点第2位以下、切り捨て)
6.3(kW)×24(時間)×365(日)=55,188kWh
55,188(kWh)×55(円/kWh)=3,035,340円/年
3,035,340(円)×20(年)=60,706,800円/20年

地上10m設置の場合

6.6(m/s)×0.9×0.9=5.4m/s (※小数点第2位以下、切り捨て)
4.6(kW)×24(時間)×365(日)=40,296kWh
40,296(kWh)×55(円/kWh)=2,216,280円/年
2,216,280(円)×20(年)=44,325,600円/20年

地上20m設置の場合、20年間の期待売電額は6,070万円。地上10m設置の場合、4,432万円になりました。10mごとに10%風が弱まる、24時間365日想定風速が吹き続けることを前提とした机上の数字ですが、その差は1,638万円にもなります。

同じ発電機で、設置高さが違うだけ(風速が10m下がるごとに10%弱まるだけ)で発電量に大きな差が出ることに違和感を感じるかもしれません。これには、風力発電の法則が関係しています。その法則は、エネルギーは風速の3乗に比例するというものです。この法則は、風力発電を理解するうえで重要なポイントです。

風速は10%減っただけですが、発電機の出力は6.3kWから4.6kWと約27%も減っています。その差が20年後に売電額で1,638万円の差となってあらわれます。

風速と出力の関係は発電機の機種ごと、風速ごとに変わります。そのため、風速が10%減れば、出力が一律で27%減るわけではありません。

ここまでの計算で地上高さ20m時の年間平均風速6m/sのとき、20年間の期待売電額が6,070万円となりました。最後にもう一つ、風速分布について考える必要があります。

風速分布と発電量

年平均風速が6m/sで、6m/s時の出力が6.3kWなら、上記の計算式でおおよその発電量がもとめられそうです。

しかし、年間の平均風速が6m/sであっても、その分布がどのような偏りになっているかは異なります。例えば、次のグラフはどちらも平均風速は6m/sです。ですが、その分布が異なります。

grapf3

次の出力の場合、分布Aと分布Bではそれぞれ発電量がどのくらい変わるでしょうか?

風速 出力
4m/s 1.7kW
5m/s 3.5kW
6m/s 6.3kW
7m/s 10.9kW
8m/s 15.5kW

分布Aの発電量の計算

3.5(kW)×24(時間)×365(日)×25% +
6.3(kW)×24(時間)×365(日)×50% +
10.9(kW)×24(時間)×365(日)×25% = 59,130kWh
59,130(kWh)×55(円/kWh)=3,252,150円/年
3,252,150(円)×20(年)=65,043,000円/20年

分布Bの発電量の計算

1.7(kW)×24(時間)×365(日)×8% +
3.5(kW)×24(時間)×365(日)×25% +
6.3(kW)×24(時間)×365(日)×34% +
10.9(kW)×24(時間)×365(日)×25% +
15.5(kW)×24(時間)×365(日)×8% =62,354Wh
62,354(kWh)×55(円/kWh)=3,429,452円/年
3,429,452(円)×20(年)=68,589,048円/20年

平均風速が同じ、分布Aの20年間の期待売電額が6,504万円、分布Bは6,858円です。今回は比較的似ている分布で計算しましたが、20年間で実に354万円も違います。また、風速分布を考慮しない場合の6,070万円と比べると、500~800万円の差があります。誤差として片づけてしまうには大きな差です。

小形風力の1基分の事業規模で、1年間観測塔を建てて風速を計測するのは困難です。必然的に、各種の想定風速を用いることになります。それぞれ精度に差がありますが、いずれも気象モデルを用いた想定値であり、ピンポイントの正確な風速を保証するものではありません。そのため、できるだけ細かい計算式を盛り込むことでシミュレーションを実際に近づけることができます。

上記の計算では、パワーカーブを1m/s単位で計算しましたが、もちろん自然の風は4.21m/sのときもあれば、6.85m/sの場合もあります。そして、その時の発電量も異なります。また、カットイン風速以下、カットアウト風速以上では発電量が0になることも忘れてはいけません。

更に細かく言うならば、1日のうちで東西南北から6時間ずつ6m/sの風が吹く場合と、1日中北から6m/sの風が吹く場合も発電の効率に差がでるでしょう。しかし、風向を考慮して発電量を計算するのは非常に困難です。

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